怪蔦

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男が病院から帰った時、家はもぬけの殻だった。
病院では、小遣いがもらえて外出の時間に酒を飲むこともできた。
気がついた時ベッドに寝かされていたが自由に歩けるほど回復した。
医師から、自分の意志で退院を希望するなら帰っても良いと言われた。
看護師の奴らの自分への態度も悪い。

うちに帰ろう。自分の城に。

戻ってみると、誰もいない。
息子に「出て行け。」と言ったが、本当に出ていきやがったか。
何のために苦労して学校に通わせたのか?
もっと金のなる木でも植えとけばよかった・・・

妻も娘も帰ってこない。
アルバムから写真が剥ぎ取られている・・・

壁に自分が描いたフラメンコの絵。
床に落ちてるパコデルシアのLPジャケット。
19XX年3月25日の日付で息子の署名。
44歳のお誕生日おめでとう、娘の署名。
日頃のご苦労に感謝して、妻の署名。
ダビングしたカセットを聞こう。
ラジカセは息子がテーブルに叩きつけて壊していきやがった。
そこから先は覚えていない。
悪魔が自分に聞いた。「死にたいか?」
魂を売ってもいい、活かしてくれと願った。

ウオークマンがあったな。それで聴こう。

食べるものがない・・・

おお、蔦よ。元気か ?
配達先の街で茂っていたのを失敬して
家の裏手に植えた。もっと茂れば面白いだろう・・・
お前はいいな。水さえあれば生きられる。
どうするか・・・
深夜、男はふらっと家を出てそのまま帰らなかった。

やがて家の主は蔦になった。
男のしつこい恨みつらみ、全てに対する憎しみの心を吸収して
裏庭に増築された3畳の小部屋を崩し、屋根を侵し、
男に代わって近隣に迷惑をまき散らすようになった。
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