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真空地帯 野間宏

自分はテキパキ仕事ができない人間なのだ。

職を転々としていよいよ自分が見たくない
自分の姿がはっきりして見えてくる。

子供のころからなにをやらせても
トロくさくて、親も行く末を案じて
スパルタ式にいろいろさせてみたが多くは
裏目に出た。

同じ仕事なのに学校を出ているというだけで
自分より立場が上で楽する人が腹立たしくて
悔しい思いをした母は私には口うるさく勉強しろと言ったが、
そうやって親に守られて学校を出てついた仕事を捨てて
実力の世界に入るとまるでだめだということがわかった。

神保町で買った真空地帯(野間宏 新潮社)。
戦時中の残留部隊の日常を描いた小説で、
そこに出てくる学徒出陣の初年兵の仕事が
一般兵と比較にならないほどトロくさく、
上官から余分の指導を受けてばかり。
傍から見てもどうしてそんなに情けないのだと
言われる始末。それが自分と重なってくる。
学校出の初年兵は優遇されやがて将校になって
一般兵の上に君臨する。いまに自分たちをいじめている
上官のように命令するだけで楽をできる階級になる。
そのことが腹立たしくて、訓練にかこつけて
とにかくいじめられる。

そのことだけじゃなくて
これがリアルな軍隊の実情と思える場面が
延々と描かれる。

やがて戦地に向かうための残留部隊なのに
兵士はみな野戦送りにされることを恐れ嫌がる。
賄賂を贈ったものが野戦行きを免れ、
部隊で目障りなものが戦地に送られる。
兵隊たちは遊郭に行くことのできる外出日を待ちわびて
上官は物品の横流しと人事に係る口利きでで私腹を肥やし、
暴力・体罰・いやがらせ。
兵隊さんのためと庶民から取り上げた食料が届いているとは
思えないほど兵士たちは飢えている・・・
そこは人間らしく息をすることもできない真空地帯。

軍規があってもどうにでも曲げられる無法地帯。
直属の上官の命令は絶対なのだからどうにもならない世界。
でも組織としてのマネジメントはどうなっているのかわらない。
学歴など関係なし。利口に立ち回わればよし。
正義など関係なし。買収をしたもん勝ち。
いじめられないために物を差し出すしかない世界。


でも陸軍刑務所の服役を終えて何もかも奪われて
部隊に戻ってきた木谷利一朗が再び野戦行きを
命じられたとき、落ちるところまで落ちた彼にもう
恐れるものはなかった。

ただ話の結末にはほんのわずか救いがあって
ただただどうしようもないストーリーではなく
読後感はわるくなかった。

いま同時進行で司馬遼太郎の坂の上の雲を読んでいて
秋山兄弟の活躍がこれから始まるのだろうけど
その裏側の世界にはこんな真空地帯も存在しているのだと
かっこいい世界の裏側にかっこ悪いリアルな世界が
あることを鮮やかに思い起こさせる内容でした。

そしてこの真空地帯というのは
いまは軍隊以外の各方面に蔓延し始めているのでは
ないかという気がします。
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